今回のシンポジウムでは、デザイン(人工物の創造)をめぐる倫理について議論します。
私たち(現生人類)は現在、モノ(物質的人工物)と情報(非物質的人工物)、アナログとデジタル、情緒と論理、文化と文明etc.の「はざま」に生き、日々デザイン(創造行為)を行っています。
しかし、情報技術の進展(文明)に人間(文化)が充分に追いついているとは言えません。市場主導の急速な変革、グローバルな情報ネットワーク(=人類史上最大の人工物)に繋がる情報端末なしでは成り立たない日常生活、新たな格差拡大の危惧など、近代以降のモノ作りの、そしてデザインのあり方自体にも疑問が投げかけられています。果たしてデザインは人類を幸福にしたのでしょうか。そしてその未来は?
現代の、そしてこれまで行われてきたデザインに対して、西欧社会(文明)とは異なる世界観・価値観もあります。例えば我が国には、モノに心(人間の内なる情報?)があり、命(生きる意志)があると見る文化、モノに心を託す文化がありました。このような文化・価値観は形を変えつつ現代まで生きていると考えられます。
以上のような認識のもと、今回のシンポジウムでは、デザインに関わる各学会から、これからのモノづくりの未来像、人工物創造の作法、望ましい未来の暮らしのあり方、必ずしも伝統にとらわれない新たな価値観の創出などを巡って、自由な提言、発想を提示していただき、モノの未来とデザインに求められる倫理について議論してみたいと考えます。