もうひとつの発展(Another Development)の視座から
植田憲/日本デザイン学会
デザインは、「⼈びとの⽣活をより豊かなものとする実践と科学」である。 しかしながら、豊かにする対象であるは ずの「⼈びとの⽣活」がどのようなものかは、デザイン領域において、どれほどまで理解されているのだろうか? 地域が違えば暮らし⽅は異なる。同じも の(道具)でも捉え⽅が異なる場合も少な くない。⼈びとがつくり出してきた「暮らし⽅」は多様で⾯⽩い。 ここでいう⼈びととは、空想的・理想的な概念上の⼈でも、ヒトの内部的な特性でもない。コミュニケーションを交わす⽣⾝ の⼈びとのことである。多くのもの・ことが、⼈と環境、⼈と⼈との徹底的なコミュニケーションから⽣み出されてきたがゆえに、そこには、たいてい何らかの約束事がある。われわれは、それを「⽂化」と呼んでいるのではないか。それゆえ、「⼈間と道具のあいだ」にも、必ず「⽂化」が介在している。 「⽂化」とは、「社会を構成する⼈々が 得し共有し伝達する⾏動様式ないし⽣活様式の総体」である。つまり、⼈びとが形成する社会の約束事である。それは⽬に⾒え難く、またそれゆえに看過され易い。それゆえに、デザインにおいて⽂化を概念のみで捉えていてはいけないと思う。 社会が⽬まぐるしく変化する今⽇、デザインは、本質的に「⼈びとの⽣活」を豊かにしているのだろうか?私たちは、個別⽂化をしっかりと受け⽌めているだろうか? ⼈びとが構築してきた約束事は、それぞれの社会の成員たちに習得・体得されている だろうか?また、⼈びとはその主体者になり得ているだろうか? こういった社会状況の中で、私ども千葉 ⼤学デザイン⽂化計画研究室では、国⽴⼤学に設置されたデザイン領域の⼀⾓として、⼈びとが周囲の資源の活⽤に基づいて ⽣活のあり⽅を⾒出すべく「もうひとつの発 展(Another Development)」 を模索してきた。デザインには、このようないわばこれからの⽂化の「原資」となる動きを⽀援する役割もあるように思う。 本発表では、「もうひとつの発展(Another Development)」の視座から、これからの⽣活⽂化創⽣を考えたい。
(千葉大学デザイン⽂化計画研究室教授)